束縛したがるカレと
縛られるのも振りまわされるのも嫌な私。
激しく対立する二人のあいだで
仁義なき戦いは何ヶ月も続きました。
このシリーズ全話のリストはこちら↓
もう喧嘩ばっかりで楽しくないし
思う存分仕事できないのであれば
カレとは別れるしかないかな・・・
と思うようになったころ、私の職場で
慰安旅行に行くことになりました。
当然カレは
あまり良い顔をしなかったのですが
もうウンザリしていた私はかまわず
参加を決めたのです。
行き先はグアム☆
グアムに着いて最初のあいだは
旅立つ私を見送った
カレの不機嫌な顔がちらついて
気分がすぐれなかったのですが
そんなのも束の間。
すぐに南国の空気になじんで
開放的な気分になりました♪
カレがいないと
なんて自由で楽しいんだろう
もう帰りたくないわあ~♪
って思うほどでした。
同僚の男性で
ものすごく意気投合した人がいました。
彼はとても陽気でアクティブで
自由でした。
彼と一緒にいると
まるで子供にかえったように無邪気に
いろんなことを楽しめる気がしました。
なんだか
小さな男の子どうしの友だちのような
そんな無邪気で楽しい関係。
でもちょっと恋心も
私の中にあったりして・・・♡
その彼と二人っきりになるチャンスに
めぐまれました。
グアムでの最後の夜
夕食の後
他のみんなは部屋に帰ったのですが
彼と私は
「最後の夜なのにもったいない!」
とホテルの裏のビーチへ。
浜辺に腰をおろし
真っ暗な海を見ながら
いろんな話をしました。
お互いに
ハートをオープンにして語り合ってる感じで
なんだか魂と魂が触れ合っているような
そんな感覚さえありました。
「真実のパートナーがいるとすれば
日本で待っているあのカレではなく
この彼なのではないか?」
「いっそのこと、このまんま
過ちでも犯してしまおうかしら・・・」
そんなことまで
私は考えてしまってました。
ホンマにけしからん奴です^^;
2時間近く経ったころでしょうか
「ビールが飲みたいね」
という話になり
2人はお互いの部屋にいったん戻り
冷蔵庫のビールを
持ってくることにしました。
2人はビーチをあとにしました。
ホテルの廊下まで来たところで私は
或る小さな生き物が
廊下を横切っているのを見つけます。
ヤドカリでした。
それがですねえ~
日本の海で見かけるのより
ふた周りくらい大きくて
ハサミも片方だけ異様に大きかったんです。
まあ、それでも
手のひらに収まる程度の
小さな生き物だったし
そのコロンと丸い形が
なんとも可愛らしくて私はつい
「あ、可愛い~~~♡」
と拾いあげてしまったんです。
一緒にいた彼は
「あぶないからやめとけって」
と言ったのですが手遅れでした。
ハサミで挟まれないように
ちゃんと殻を持ってたんですが
このヤドカリ
びっくりするくらい身体(?)が
柔らかくて
(中国雑技団並みですw)
グニュ~~~っと
ハサミを殻のほうまで伸ばしてきて
私の指を挟んだのです。
「痛いっっ!」
慌てて手を振り
ヤドカリを外そうとしましたが
ヤドカリは私の右手の親指を
すごい力で挟んだまま放しません。
それどころか外そうとすればするほど
ギュ~~~っと力を強めて
抵抗してきます。
彼も最初は
ヤドカリを引き離そうとしたのですが
ますますヤドカリがハサミの力を強め
あまりの痛さに私が悲鳴を上げたので
困ってしまいました。
そこで彼は私をその場に座らせ
ヤドカリがしがみついている右手を
床につかせました。
「もう、ヤドカリを
踏み殺してしまうしかない!」
確かにそうでもしないとヤドカリは
放してくれそうにありませんでした。
親指をみると血だらけで
どうやらヤドカリのハサミは
私の親指の爪を割り、その下の肉にまで
喰いこんでいるようでした。
痛いなんていうもんじゃありませんよ。
(そうは言っても「痛い~!」しか
言葉が出ませんでしたがw)
ところが私はそんな状態にもかかわらず
「それだけはやめてっっ!」
と彼の提案を拒んだのです。
彼は困惑しました。
「え!?だってコイツを殺さないと
キミの親指は助からないよ!?」
何度も何度も
説得しようとしてくれたのですが
それでも私は拒みつづけました。
私は熱烈な動物愛護主義者では
ありません。
このヤドカリに対しても
なんの愛着もありません。
自分の親指とこのヤドカリ
どっちが大事やねん?
って聞かれたら即座に
「もちろん親指!」
と答えたでしょう。
なのに、なぜ???
とってもバカげた話なんですけどね
このとき私の頭の中では
目の前のヤドカリと日本にいるカレが
重なってたんです。
あ、言っときますがカレ、べつに
ヤドカリっぽい人というわけじゃ
ないですよw
でも、なぜかあのときの私には
ヤドカリとカレが
同じに思われたんです。
で、同僚の彼がヤドカリを踏み殺すのを
想像したとき
「やっぱり(日本にいる)カレを
捨てるわけにはいかない!」
って、とっさに思ったんです。
喧嘩ばっかりで自由もないし
そんなカレなんてさっさと別れて
目の前の同僚の彼と付き合ったらええやん
さっきまでそんなふうに
思ってたはずなんですけどね
いざ「じゃあ別れちゃう?」って
考えたとき
「やっぱり別れるわけにはいかない!」
って思ったんです。
やっぱりカレのことが好きだから。
カレのことが大切だから。
超自立男性との恋がダメになって
ものすごく傷ついて以来、私は
「好き」という気持ちよりも
「どうやったら自分が傷つかずにすむか」
ということにばかり
気をとられていたように思います。
相手を愛そうとか相手を大切にしようとか
そういうことよりも
自分が傷つかないために
深入りしないようにしようとか
振りまわされないようにしようとか
恋ではなく仕事に打ち込もうとか
そんなことばっかり考えて
男性と付き合うようになっていました。
でも
そんな腰のひけた付き合いかたをしたって
私も相手の男性も
幸せになんてなれませんよね。
こんなことになって初めて気づいたんです
「それでもやっぱり私は
カレが好きなんだ」
って。
「カレのことを大切にしたいんだ」
って。
ヤドカリに挟まれて
そんなことに気づくなんて^^;
いやいや!
私のカレへの想いはどうでもいい!
いや、どうでもよくないのですが
今はそれよりも目の前のヤドカリです!
私の親指どうしましょう?
結局同僚の彼が
フロントからハサミを借りてきてくれて
ヤドカリのハサミの付け根から
断ち切ろうとしたらヤドカリも
「アイタタタ!」
って私の親指を解放してくれました。
親指の爪はグチャグチャに砕けて
内出血で真っ黒になってしまいました。
どれくらい痛かったかというとですねえ〜
出産ってものすんごく痛い
って言うじゃないですか
私も1人産んでますけどね。
でも
「ヤドカリと出産とどっちが痛い?」
って聞かれたら迷わず
「ヤドカリ!」
って答えるくらいです。
出産はまたあってもいいかな
って思いますが
ヤドカリはもう二度と嫌ですね〜。
まあ、痛いうんぬんよりも
かたや出産は「建設的な痛み」だけど
ヤドカリに親指挟まれても
なんの得にもなりませんもんねえw
で、親指すんごいことになって
グアムから帰国したわけですが・・・
カレには
ヤドカリに挟まれたことは話しましたが
そのときの詳しい経緯は
後ろめたくて言えませんでした。
帰国した私をカレはやっぱり
不機嫌な顔で出迎えました。
状況としては出発する前と
なんら変わっていません。
でも私は親指ちぎられそうになって
自分の本当の気持ちに
気づくことができたわけで、そのことが
カレとの関係に変化をもたらすことに
・・・なったのかどうかは
また次のお話で☆↓
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